消費税還付による節税のいざこざ
一大トレンドを築き上げていた「マンション取得時の消費税還付」を利用した節税方法。あまりの露骨さから国税による規制が入っている。
不動産取得における消費税還付の仕組み
事業者は売り上げに伴う「預かった消費税額」と、仕入れに伴う「支払った消費税額」の差額を国に納付している。預かった消費税額より支払った消費税額の方が多い場合には、その差額分が還付される。
この仕組みを使用したのが、不動産取得による消費税の還付である。
①消費税の課税事業者として届け出をする
②マンションを購入した課税期間に非課税売上を計上しない
賃料は非課税売上のため、入居者を入れずに賃料収入を計上しない
③課税売上を計上する
Ex)敷地に自販機を設置し、自販機だけの売り上げを計上(自販機は課税売上)
これが一般的に「自販機スキーム」と言われる節税の形であった。
このスキームは国税とスキーム指南業者との間での戦いの歴史がある。
規制の歴史
そもそもは固定資産を取得してから3年間に著しく課税売上割合が下がった場合は、差額相当額を返金しなければならないという制度があった。1年目を課税売上のみとし、翌年以降に賃料収入を計上した場合は課税売上割合が減少するため節税スキームが完成しない。そこで、(1)納税義務がない「免税事業者」(2)課税売上5,000万円以下の場合に選択可能な「簡易課税事業者」になることで上記の規制をかいくぐることができていた。
これにより多くがこの規制からすり抜ける形となってしまっていたため、国税は2の矢を放つ。100万円以上の固定資産税を取得し、「あえて課税事業者」となり消費税控除を受けた者はその年度以降3年間は簡易課税事業者や免税事業者になることができないという規制だ。しかしこれに対しては「元から課税事業者」としてあらかじめ準備してマンションを取得することでまたしても規制からすり抜けるスキームが多く存在していた。
そして3の矢は、1000万円以上の固定資産と販売用資産を取得した課税事業者はその年度3年以降は簡易課税事業者や免税事業者にはなれないという規制だ。これによりしっかりと規制の網を張ったと思われていたが、そこにはウルトラCが存在していた。それは「金地金の転売」である。これは課税売上を下げない方法であり、金地金は課税売上であるため転売を繰り返すことで課税売上を計上することができる。これによりまたしても規制の網を潜り抜けられた国税は2020年10月に「1,000万円以上の居住用家屋を所得した場合には消費税の控除ができない」とすることでいたちごっこに幕を下ろすことになる。
この規制によりこれまでの節税スキームを活用していた者以外にも純粋に投資用マンションを購入して消費税控除を受けていた者に対しても結果的に規制がかかった。
このいざこざの果てに得をしたのは、国税か、スキーム指南業者なのか。このようないざこざを見るに、お金について相談する相手は慎重に見極める必要性を強く感じている。
補足知識
〇消費税の控除額の計算方法
「個別対応方式」
①支払った消費税を「課税売上に対応するもの」と「非課税売上に対応するもの」に分ける
②課税売上に対応するものは100%控除可、非課税売上に対応するものは100%控除不可とし、両方に係るものは「課税売上分」を控除する
しかし、消費税を分類わけするのはかなりの面倒となるため以下の特例が認められている。
「一括比例配分方式」
支出に伴い支払った消費税額を一括りにし、そこに課税売上割合を掛けた金額を仕入れ控除税額とする。
参照
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/shou306.htm