バイデン大統領、富裕層増税を打ち出す構え

バイデン大統領は富の再分配による格差縮小を目指している。

所得が100万ドル(18000万円)以上の個人に対して株式譲渡益に税率39.6%を課税するといった内容だ。現行の税率は20%。これが実現すれば税率は約2倍引きあがることになる。更に現在一定の所得がある個人の投資による所得に対しては3.8%の付加税が課されている。これを合わせると40%を超える税率となる。

これらの報道が米国内で相次いだことを受け、22日の米国株式市場は大幅に下落した。2017年に誕生したトランプ政権では減税とFRBの利上げを軸に株式市場の上昇に貢献した。上院財政委員会のグラスリー上院議員はこれに対して「投資が減り、失業を招くことになる。2017年の減税政策が破綻していないのであるならば、直す必要はない。」とコメントしている。株式市場から資産が離れることは同時に企業の経済成長にとってもマイナスを意味する。企業の成長性がマイナスとなればその企業で働く個人に対してもマイナス面は少なからず降りかかることだろう。

しかし一方でバイデン大統領が目指す「格差是正」に対しては異なる見方をすることもできる。新型コロナウイルス禍において各国は大規模な金融緩和と財政出動を行った。これにより株式市場は軒並み株高となった。46日に発表したフォーブスのデータによると保有資産10億ドル以上の超富裕層は過去最多となり、その資産残高も大きく増やすことになった。

バイデン大統領は富裕層増税と21%から28%への法人税増税での財源を「雇用計画」と「家族計画」の2本の柱に充てることで格差是正を目指している。「雇用計画」では8年間で2超ドルを超えるインフラや研究開発へ投資を行うことで雇用創出を狙う。「家族計画」では3月の1.9兆ドルのコロナ対策に加え子育て支援や教育機会の拡充を行う。

もちろんこれらの案の実現へのハードルは高く、トランプ前大統領時代に減税政策を進めてきた共和党は強く反発。更には先に述べた株式市場の下落は超富裕層などの投資家からの反発とも読み取れる。

「歴史は繰り返す」という言葉がある。格差拡大は民主主義を揺るがす根源となりえるだろうか。そしてそれは富裕層増税による富の再分配によって解決されるのだろうか。様々な思惑が交差する中で課題解決に向けた議論が進んでいくことになるだろう。

 

 

バイデン税制構想第2弾、富裕層増税を軸 格差縮小訴え:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN230420T20C21A4000000/

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-04-22/QRZ68HT1UM1401

https://forbesjapan.com/articles/detail/40730