カリフォルニアワインの父
ワインと言われ多くの方が想像するのはフランスやイタリア等の欧州であろう。その歴史は諸説あるが紀元前4000年程前に現在のジョージアが発祥とされていることから、その想像は恐らく正解であろう。確かに街のちょっとした売店のワイン売り場を覗くと、商品の多くはフランス産やイタリア産等の欧州を原産とするワインである。世界のワイン生産量を見ても1位から3位がフランス、イタリア、スペインと欧州が占めていることからも納得がいくであろう。
しかし、これら欧州の次に生産をしている国・地域はご存じだろうか。日本人にとってある意味非常に馴染みのある国であるため想像に難しくないかもしれない。
「アメリカ」である。アメリカは上述の国・地域と比較すると歴史が浅いことから「新世界」と呼ばれている。その歴史は18世紀にスペインの宣教師がカリフォルニアでのワイン造りが始まりとされている。その後は1920年の禁酒法などをきっかけにワイン製造に大きな影響を与えることになるが、1933年に撤廃されて以降はワイン製造が活発に行われるようになる。そして禁酒法からおおよそ100年の時を経た現代においては世界的に多くの方に愛されるワインの原産地となっている。
アメリカワインの主な産地はカリフォルニア州でアメリカ国内のおよそ90%がこのカリフォルニア州で製造されている。
そんなカリフォルニア州のワインの父と呼ばれる人物が「ロバート・モンダヴィ」である。ロバート・モンダヴィは1913年にミネソタ州に、イタリアマルケ州から移り住んだチェザーレとローザの長男として誕生する。父親がワイン用ブドウの出荷業を営んでいたことから、小さいころからワイン用ブドウに触れ、大学卒業後にはワイナリーで働き始める。その後はナパへ移り本格的にワイン製造を行うことになるが、当時のカリフォルニアワインについて非常に低品質であり、視察で訪れた際に感じた欧州とアメリカとの品質の差を埋める最新の技術を取り入れたワイン製造で欧州のような高品質はワインを造ることを志す。しかしこれが家族からの反対を受けることになり1966年にロバート・モンダヴィワイナリーを立ち上げる。モンダヴィは先述の最新技術を取り入れたワイン製造に加え、コンサートや美術展を開催することで人を集め、ワインをより身近なものとする文化発展にも寄与することになる。また、最高峰のワイン造りの観点からフランスのシャトー・ムートン・ロスチャイルドのフィリップ・ロスチャイルドと共同でワイナリーを設立。そのワイナリーが現在カリフォルニアワインとして高評価を受けている「オーパス・ワン」である。
このような情熱と活動からモンダヴィは「カリフォルニアワインの父」として2008年に亡くなった後の現代でも知名度を誇っている。現在、ロバート・モンダヴィワイナリーは2004年の買収を受け、モンダヴィ家が経営しているワイナリーではなくなっている。モンダヴィ家(息子、孫)がそれぞれ別のワイナリーを経営している為、モンダヴィ家の血が流れるワイナリーという観点からはそちらを訪れるのも良いかもしれない。他方、現在のロバート・モンダヴィワイナリーはその血こそ引き継いでいないものの、長く紡いできた歴史とその始まりから続く情熱を感じられる場所となっているだろう。
筆者はロバート・モンダヴィワイナリーを一度訪れたことがある。
上述の「オーパス・ワン」とは道路を挟んで斜め向かいに所在している。
モンダヴィワイナリーのテラスは目の前にブドウ、その奥にナパヴァレーの山々、そして真上には青く澄んだ空と抜群の環境であり、その下で飲むワインは絶品であろう。ぜひ一度足を運んでいただきたい。