令和4年度住宅ローン控除改正
住宅ローン控除と呼ばれるものがある。平成から令和に時代が移り変わり4年目を迎えているが個人向け住宅ローンの新規貸出額、貸出残高共に右肩上がりである(国土交通省 令和2年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書 参照)。そのような状況下で「住宅ローン控除」という言葉を聞いたことがある人は多いのではないだろうか。
正式名称を「住宅借入金等特別控除」と呼ぶこの制度は一定期間において借入金の残高の一定割合を税額控除できる仕組みである。詳細は過去の記事をご覧いただきたい。この制度が岸田内閣誕生後初めての税制改正で一部変更が加わる。大きな変更内容は減税割合の見直しである。元々は年末時点の借入残高の1%を税額控除できる仕組みであったが、この割合を0.7%に変更される。これは会計検査院からの指摘で、昨今の住宅ローン金利事情を鑑みたときに1%を切る金利が多くある中で1%を控除できるのはおかしいのではないかといったことから今回の変更に踏み切った。この実情の金利と制度面の金利とのギャップを利用して利益を得ようとすることを防ぐ目的だろうか。また、所得制限や残高の上限についても引き下げが行われることになる。
一方で控除できる期間については引き延ばしが入ることになる。これまでは原則としてその期間は「10年」とされていたが(消費税増税等により特例で13年となっていたが)、本改正により原則として期間が「13年」とされることになった。
なお、既に借入が行われている人に対して本改正は対象とならない。過去振り返ると控除割合や控除期間において改正が繰り返されてきた歴史見ると何ら不思議ではない改正であろう。しかしながら今回の改正は誰のためのものになるだろうか。実情の金利とのギャップを埋める為の控除率の引き下げ、所得制限等を見ると比較的富裕層を制限する目的なのだろうか。否、これが富裕層への制限になり得るだろうか。更にはこれにより当然一般世帯の税負担軽減額も減少することになる。本改正に限らずこういった動きは果たして誰のためのものなのか、しっかり把握する必要がある。表面的なものだけでは判断が惑わされることもあるだろう。