相続と不動産について考える

 

 

先日、不動産を保有しているものの相続税の申告において路線価を基に算出した申告を否認する判決が下された。その理由は(以下、判決文引用 一部加筆修正)、「相続税の課税価格に算入される財産の価額について、評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、合理的な理由があると認められることから、当該財産の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが平等の原則に違反するものではないと解することが相当である。」とある。言い換えるならば、「相続税負担を軽減する行為が意図的に行われた結果、他の納税者間における納税負担に不公平が生じるため、本行為(相続税申告の否認)は違反行為ではない。」というものである。これにより、意図的な節税行為は脱税に当たると解釈が出来る。

しかしここで疑問が生じる。意図的な節税行為とは何を指しているのだろうか。

本件の判決において、評価通達での申告額と、否認した国税側の鑑定評価額との差については、これについて先述の否認理由とするべきではない、とある。その上で本事案における一点の行為(物件の購入、借入)が行われなかった場合との乖離と、その乖離(租税負担の軽減)を期待した物件購入、借入が意図的に行われた点において、上記の否認理由とするとある。これを読み解くにどこまでが意図的な節税行為かが不明瞭に感じている。例えば、よくある「アパートを建てた相続対策」で考えるならば、土地は「路線価」に「借地権割合」と「借家権割合」(+賃貸割合)を、建物は「固定資産税評価額」に「借家権割合」を掛け合わせて算出することで、実勢価格より低い課税価格になる。これを謳い文句として金融機関やハウスメーカーは資産家に話を持っていくケースが良くある。本件では借入の際に、金融機関の融資稟議書に租税負担軽減目的という意図が含まれてしまっていた為、節税行為客観的な事実として浮かび上がってきた。また、当該購入、借入が被相続人の亡くなる3年前に行われていたことや、相続開始後に物件を売却していたことからも今回のような判断が出来るといったところであろうか。

しかしながら結論として出てくるのは「基準が分からない」という点である。ルールが曖昧な状況において、「不動産で相続対策」はどこまで通用するだろうか。そしてこれは何も相続対策が必要な富裕層だけの話ではない。不動産業界(建築業界)や金融機関等へも影響が

ある。これらの業界は日常生活のインフラとして機能する側面を持つ。これ即ち、我々いち個人へも影響を及ぼす話でもある。