遺言は万能か
「資産を誰に何をそのくらい遺すのか」
亡くなるものに残された最後の仕事であり、最後の意思表示となる遺産が皮肉にも「争続」の原因になりかねない。
相続の優先順位は①遺言書②遺産分割協議③法定相続分である。
遺言書がない場合は、遺産分割協議にて「資産を誰が何をどのように受け取るか」を決定する。遺産分割とは相続人で話し合いを行い、相続人全員の同意をもって遺産分割を行う。話し合いに折り合いがつかない場合には「争族」が開始する。この遺産分割協議には被相続人の意思は反映されていないといっても良いだろう。
うまく折り合いがつけば問題はないが、人間同士そううまくはいかないものである。「家族だから」と思っていたとしても、むしろ家族同士であるからこそ争いに発展することがよくある。
そのために遺言がある。
遺言には大きく「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」そしてこの「自筆証書遺言の法務局での保管制度」が昨年7月に始まった。
自筆証書遺言の良さは何といってもハードルの低さであろう。自分で書き、自分で保管をするだけの作業に大した手間はかからないであろう。一方で手軽であるがゆえに、遺言書の改ざん、内容の不備、複数の遺言書など遺言書を作成した為に生じる問題も多数ある。自分で保管するため作成した遺言書の存在を相続人が把握しないまま相続手続きが行われてしまうこともありえるだろう。
公正証書遺言は公証人役場で作成をするため偽装や不備、紛失などの心配はない。そのため費用や手間等が自筆証書遺言とは比べ物にならない点がデメリットであろう。
これらを補完する制度は自筆証書遺言の保管制度である。その名の通り自筆証書遺言を法務局で保管してもらうため偽装や紛失等の心配はない。しかしながらこの制度のデメリットは「不備」が生じる可能せいがある点だ。保管こそしてもらえるが、あくまでも作成するのは自分自身であり、内容の確認は行われない。これにより遺言書が無効になる可能性は残したままである。
そもそも遺言書自体も万能ではない。よくあるケースは遺言書を作成後に資産状況が変わった場合に不備が生じてしまう。一度で終わらないのが「終活」の難しいところである。円満相続を行うために、自身の力であれこれ調べ・実行するのはかなりハードルが高いであろう。ましてやせっかく行った対策が円滑に実行される保証もない。頼れる専門家にお願いをしたいところではあるが、一言で専門家といえどもその実力は様々である。それらを本当に頼れる人を見極める力も必要なことは何と皮肉なことであろうか。