国が発行するCBDCとは

 

お金の在り方が急速に変わりつつある。デジタル技術の進歩によりCBDCが注目を集めている。CBDCとは「Central Bank Digital Currency」の頭文字をとった言葉であり、日本語には「中央銀行デジタル通貨」と訳される。その名の通りその国の中央銀行が発行するデジタル通貨の事を指す。世界的にCBDCの検討が加速している。

 

<CBDCとは>

 

CBDCとは先述の通り中央銀行が発行するデジタル通貨の事である。

日本の中央銀行は日本銀行である。日本銀行はこのCBDCを以下のように定義している。

 

・デジタル化されていること

・円などの法定通貨建てであること

・中央銀行の債務として発行されること

 

<他のデジタル通貨との違い>

 

最も大きな違いは「価値」であろう。

各国が発行する通貨であることからその価値はその国により保証される。この点においては現金と何ら違いはない。現在流通している日本円の価値は日本という国により保証されている。一方で仮想通貨等は民間が発行していることからその価値の裏付けとなるものはない。

 

<メリット>

 

大きなメリットの1つはコスト面にある。

まず現金には発行にかかるコストがかかる。更に保管や流通にはコストがかかる。銀行のATM等でいつでもだれでも現金が引き出せるように現金を各ATMに届ける必要がある、その為の運搬コストもかかる。年間で2.8兆円ものコストがかかっていると言われている。CBDCを導入するとこうしたコストは大幅に削減することが出来ることが予想される。

もう1点、現金は足跡が付きにくい。その為不正にお金を利用されることが問題となっている。しかしデジタル通貨を利用すると履歴を事細かに確認することができる点も導入のメリットと言えるだろう。

 

<日本での動き>

 

日本ではCBDCの発行やその計画の発表はなされていない。

しかしながら実証実験に関しては行われており、昨年度までの「概念実証フェーズ1」が今年の4月の報告書として公表され、現在は「概念実証フェーズ2」が行われている。具体的な話はなされていないものの、導入の可能性は現状ゼロではないだろう。

 

<各国の動き>

 

(アメリカ)

アメリカは今年に入りバイデン大統領が暗号通貨に関わる大統領令に署名し、CBDCの発行へ向けて前向きな検討段階に入った。アメリカは従来デジタルドルの発行にセキュリティ面や信用面、世界的な側面で様々な問題を抱えていることから、慎重な姿勢を見せていた。しかし、中国がCBDCの発行に積極的な姿勢を見せていることからアメリカでも前向きな姿勢が見られるようになってきている。

 

(中国)

中国はCBDCで世界のリーダーを目指している。

既にデジタル人民元を発行し、対象地域内でデジタル人民元の実証実験を行っている。未だ正式な導入には至っていないものの、世界の先駆け的な存在になっていることは事実であろう。

 

(EU)

EUでもデジタルユーロの発行準備は進められている。しかし、まずはしっかりとした準備が必要であると考えられており、開発・運用開始までには5年ほどかかるとされている。更にはこれらの段階で重大なエラーが発生する場合には発行に踏み切らない選択肢も十分残されているとしている。

 

<今後について>

 

各国でCBDC導入への動きを見せてはいるものの、課題は多く残されている。

日々莫大な量の取引が行われる中で、運用コストはどのくらいかかるのか。既存の民間金融機関の在り方はどのように変化するのか。導入のハードルは依然高いように思える。しかし新型コロナウイルス感染拡大はCBDC導入においては1つの転機であったことは間違いないだろう。リモート化、デジタル化が急加速したことはお金の在り方も例外ではないだろう。

上述の通り、各国が導入へ向けた動きを見せているのは事実である。通貨がデジタル化した未来が近いうちにやってきたとしてもそれは決して不思議ではない。