不動産の共有名義
不動産を共有名義で保有することを検討する家庭が増えている。
当然、これにはメリットもデメリットも存在しているが、検討する際にしっかりとこれらを明確にしておかないと後々のトラブルに繋がることは容易に想像がつく。
<メリット>
まず、共有名義での不動産保有のメリットは何といっても税金面であろう。共同名義で、それぞれで住宅ローンを組んだ場合に2人共住宅ローン控除を受けることが可能である。
2022年時点で一般住宅に長期優良住宅等に該当しない場合(該当する場合は控除額が増える)は最大年間21万円の税額控除を13年間受けることができる。仮に6,000万円の物件を購入し、住宅ローンを組んだとすると単体での借入だと21万円の税額控除しか受けられないが、共有で住宅ローンを組むことで42万円の税額控除を家計で受けることができる。
また、不動産売却時に売却益3,000万円までを非課税にできる「居住用財産の3,000万円特別控除」も共有名義の場合には6,000万円までを非課税にすることができる。
また、共有の稼ぎで不動産を購入することで、住宅ローンの審査も含めより高額な不動産を取得することができることもメリットと見ることができるだろう。
<デメリット>
一方でデメリットも存在している。
まず気にしなければならないのは離婚時であろう。婚姻中に取得した財産は名義問わずに財産分与の対象となる。不動産も当然こちらに該当する為、単独所有であろうと、共有名義であろうと分与の対象となるわけだが、共有名義である場合には1/2を分け合う形となる。一見、単独所有より分かりやすいようにも見えるが、実はより複雑である。不動産を処分する際には当然に双方の同意が必要である。更に仮に一方が当該物件に住み続ける場合には、もう一方の持ち分の代償金を支払い、単独名義にするといった話にもなり得る。この場合には住宅ローンの契約内容を変更する必要が出てくる可能性もある。双方の同意で物件を売却して売却代金を折半にするとできれば簡単ではあるが、そう簡単にいかないのが実態である。
上記は当人同士での問題であるが、仮に当人同士が円満であっても注意が必要なのが相続時である。共有名義のまま相続を迎えたとすると権利者が増えていくことになり、上述の通り管理がより複雑になることは注意しなければならない。
不動産は人生で最も大きな買い物の1つとされている。非常に重要な決断であるからこそ、将来起こり得る様々なリスクについて考えてから決断を下すことが求められる。決して共有名義を否定するわけではない。他の決断と同様、様々なケースを想定した上で決定を下してもらいたい。