上場株式の相続

 

低金利や円安、インフレ等の様々な取り巻く環境により資産運用の重要性は日に日に増している。老後資金2,000万円不足する問題が話題となったことにより、資産運用をしないと老後のお金が足りなくなることは想像させられたが、一方で株や投資信託を保有したまま老後を迎えそのまま亡くなったらどうなるのだろうか。その取扱い方法を見ていきたい。

 

①移管

まず、株や投資信託は当然相続財産となる。原則として故人の証券口座から直接換金(保有する株式や投資信託を売却)することはできないとされている。よってまず相続人が証券口座を開設し、移管手続きを行ったうえで換金をする場合はその手続きを行う。なお、移管には基本的には被相続人と同じ証券会社の口座が必要となる(例外となる証券会社もある)。

 

 

②評価方法

 

上場する株式は以下の中から最も低い価格により評価される。

 

・被相続人の死亡の日の最終価格

・課税月の毎日の平均最終価格

・課税月の前月の毎日の平均最終価格

・課税月の前々月の毎日の平均最終価格

 

(「国税庁 上場株式の評価」より)

 

 

③売却の際の税金

 

相続した上場株式を売却する際に譲渡益が出ている場合には、譲渡所得として課税が発生する。譲渡所得の計算方法は以下のとおりである。

 

「売却価格」-(「株式の取得費用」-「譲渡に係る費用」)

 

ここでの「株式の取得費用」とは、「故人が当該株式を購入した際の価格」である点は注意が必要である。例えば、1億円で被相続人が当該株式を保有しており、相続人が相続した際に10億円になっており、売却時も10億円のままであった場合には、売却価格から差し引ける金額は「1億円」となる。なお、取得費加算の特例により、当該株式を相続する際に支払った相続税額の一部を「取得費用」として加算することができる。

 

※なお、アメリカではステップアップ方式が採用されており、先述の例で相続、売却をした場合には、売却価格から取得費「10億円」が差し引かれ売却益にかかる費用は0となる(しかし、バイデン政権下で廃止へ向けた議論を行うとの発言をしている)。